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<広がる「演出」というフィールド>
坂東玉三郎
楽しみながら、
できることを
懸命に
やっていきたい

世界でもっとも知られた日本人の一人である、歌舞伎役者・坂東玉三郎さん。“当代一の女形”と謳われる一方で、演出家として、ジャンルの垣根を越えて若い世代の育成に力を注いでいます。秋にはその成果の一つ、太鼓集団「鼓童」によるパフォーマンスを演出。いずれは自分が演じるより外から芝居を観ることが多くなると考えて、25歳の時から演出の勉強をしてきたそうです。この2月には代表作とも言われる『鷺娘』を、もう踊らないとHPで発表した坂東さん。その胸のうちを語っていただきました

(前略)

 歌舞伎役者って、外の世界で仕事をしてもいいし、境界が曖昧なんですね。そうした自由さが歌舞伎をここまで生き延びさせた要因の一つだと思っていて、僕自身も振り幅がなきゃ、やってこられなかった。それが僕の生命線。趣味のダイビングを楽しむために海へ行くのも、外国へ行くのも、熊本の八千代座で踊るのも、鼓童との仕事も、僕にとっての振り幅です。だから、八千代座にしても鼓童にしても、村おこししようとか、そんな使命感でやってるわけじゃない。面白そうだから行くだけ、楽しいからやっているだけ(笑)。もちろん、いいものができるようにクオリティは求めるよ。
 二義的には村おこしになって、かつての栄盛が蘇ったらいいと、どこかでは思っています。でも、それが主たる目的なら、スターや資本家を呼んできて、プロデュースをやればいいのであって、僕の仕事ではない。商業ベースで「ここを節約すれば、これだけ儲けが上がります」という話であれば、僕は帰ります(笑)。やれない。
 演出って、面白いんですよ。ロンドンでは、シェークスピアでさえ演出をする前には役者としての修業を3年やらされたという。役者の生理を知らなければ、演出家は何を引き出せばいいのかわからないということなのでしょう。歌舞伎では昔から演出家はいなくて、座長が演出しているのですが、後ろから古参がいろいろ言う(笑)。「何代目にこう言われた」「誰々がこう言ってる」という世界で、コンクリートの劇場の中で演出家が役者に演出をつける他の演劇とは、少し違いますね。

(『婦人公論』2009年9月7日号より一部抜粋)

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