注目記事

<ひんしゅくは喜んで買います>
上野千鶴子×松井冬子
オトコ社会の壁を
ペンと絵筆で
突き破る

ベストセラー『おひとり様の老後』の著者であり、社会学者の上野千鶴子さんと、内臓をむき出す女性や幽霊など、美しくも恐ろしい題材で注目を集める、日本画家の松井冬子さんが艶やかな着物姿で登場です。松井さんは大学時代から上野さんの大ファンで、今年出版された自らの画集の解説文を半ば強引に依頼したことから、交流が始まったのだそう。お二人に共通するのは、創作の大きな動機が男性中心社会への強い反発であるということ。壁を突き破ろうとするパワーに圧倒される対談です。

上野 NHKの番組、評判がよかったですね。私の周囲でも「偶然見たら、目が離せなくなった」という人が多かったです。
松井 ありがたく思いました。ただ、「日本画の技法を独学で復活させた」と解説されると、大げさだなと身がすくみました(笑)。女性の視点での発言がカットされていたのが、少し残念でしたね。小さな頃から男女差別的なものを感じていて、それは私の作品を語るうえでは大きな要素。だからこそ、はじめての画集の解説を上野先生にお願いしました。
上野 最初は、見も知らないあなたから解説を頼まれて、戸惑いました。
松井 すごいごり押ししちゃった(笑)。私が最初に先生を知ったのは東京藝大に入った24歳の頃で、遅いんです。でも、女性学の本棚から見つけた先生の『発情装置』を読んで一気にファンに。「私のフェミニスト・ヒーローです!」と、すぐにファンレターを出しました。小学生の頃から母に「男に頼るような生き方はするな。結婚はするな。自活して生きていけ」と言われていたんです。
上野 結婚している母親が娘にそういうことを吹き込むのは、自分の結婚生活が不幸だと言ってるのと同じ。あなたは、OS(オペレーションシステム)がフェミなんだ。(笑)
松井 母は男尊女卑の社会に疑問を持っていたようです。私も小学校3年くらいから、出席番号はなぜ男が先なのかと疑問でした。まだ授業で女子は家庭科、男子は技術と分かれていた時代なので、「なに? 女子は家で編み物でもしてろってことですか?」と。(笑)
上野 早熟だなぁ。
松井 勝気な性格で、私のほうが男子より強いと思ってた(笑)。『うる星やつら』という漫画の影響もあって、強い女の子が大好きでした。ジャンヌ・ダルクの伝記を読んで甲冑姿の絵を描き、柔道を習おうとしました。父に「ダメだ」と止められましたが。
上野 なにか悔しい思いをしたことがあるんですか?
松井 小中学生の男の子のあからさまなセクハラ、あと女ってことだけで根拠のない見下げ目線、あれが嫌で嫌で。
上野 しかも、家庭ではお母さんが呪文を唱えていた。(笑)
松井 アハハハ。毎日言っていたわけではありませんけど、強烈に私の中で残っている言葉なんです。
上野 私の母も、つね日頃「女の子も手に職をつけたほうがよい」と言っていたのに、私が18歳になって進学するというとき、手のひらを返したように「女の子は短大でいい」。ものすごく裏切られたなぁ。

(『婦人公論』2008年年12月7日号より一部抜粋)

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