〈事務所独立でつらぬいた情熱〉
テレビのキャリアを失っても、芝居に集中したかった
水野美紀
2005年末に所属事務所から独立した女優・水野美紀さん。それまで、ドラマ『踊る大捜査線』や『恋人はスナイパー』、映画『交渉人 真下正義』など多数の作品で活躍していた水野さんですが、実は20代後半からずっと、「自分の引き出しがからっぽになってしまった」ような思いを抱いていたといいます。そこから環境を変えるべく、彼女を衝き動かしたものは何だったのでしょうか。あえて新境地に挑んだ当時の覚悟についてお話いただきました。

女優になりたいと思ったのは、小学校6年生のとき。『ガラスの仮面』(天才的な演技力を持つ少女の成長を描いた、美内すずえ作の人気マンガ)を読んだのがきっかけです。その前は漠然と獣医に憧れたりしていたのですが、それからは役者、とりわけ劇団や芝居に興味を持つようになりました。舞台の華やかさと厳しさに惹かれたんでしょうね。 それで、中学1年生のときにオーディションを受け、芸能事務所に所属。テレビの仕事を中心に、 タレント活動をスタートさせました。
とはいえ当時はまだ13歳でしたから、女優がどういうものか具体的にはわかっていなかった。ですから、最初はテレビドラマに出演することを目標に、さまざまなオーディションを受けました。 何事も経験してみなければわからないと、Vシネマに出たり、アクションをやったり、歌を歌ってみたり。CDはあまり売れませんでしたけど(笑)。「仕事があることが幸せだ」と思いつつ、あらゆるジャンルの仕事をこなしていたのです。 20歳を過ぎてからは、ドラマなど映像の仕事が増えてきました。ありがたいことでしたが、20代後半になったころから、自分の中にある引き出しが空っぽになっていることに気づき、カメラの前に立つのが怖くなってしまったのです。それまでは毎回、「このドラマでは、こういうことにチャレンジしてみよう」と、自分なりに課題を作って前に進んできたのに、一体どうしたら新鮮な気持ちで演技ができるのか、わからなくなって……。
(『婦人公論』2008年5月22日号より一部抜粋)